こんにちは。Mr.Tです。
今回は六君子湯についてです。
六君子湯。
胃腸関係のトラブルでよく出される漢方です。
特に胃のトラブルがなくても食欲不振の患者さんに処方されることも多いです。
今回は六君子湯について説明していきます。
Contents
効能・効果
胃腸の弱いもので、食欲がなく、みぞおちがつかえ、疲れやすく、貧血性で手足が冷えやすいものの次の諸症:胃炎、胃アトニー、胃下垂、消化不良、食欲不振、胃痛、嘔吐
用法・用量
通常、成人1日7.5gを2〜3回に分割し、食前又は食間に経口投与する。
なお、年齢、体重、症状により適宜増減する。
組成
本品7.5g中、下記の割合の混合生薬の乾燥エキス4.0gを含有する。
- 日局ソウジュツ:4.0g
- 日局ニンジン:4.0g
- 日局ハンゲ:4.0g
- 日局ブクリョウ:4.0g
- 日局タイソウ:2.0g
- 日局チンピ:2.0g
- 日局カンゾウ:1.0g
- 日局ショウキョウ:0.5g
配合生薬の薬効
生薬名 | 読み | 効能・効果 |
人参 | ニンジン | 滋養強壮・胃腸虚弱 |
甘草 | カンゾウ | 緩和・鎮痛 |
陳皮 | チンピ | 健胃・去痰 |
大棗 | タイソウ | 胃腸・鎮痙・滋養 |
半夏 | ハンゲ | 嘔吐・痰飲・胃炎 |
生姜 | ショウキョウ | 健胃・感冒・冷え症 |
蒼朮 | ソウジュツ | 健胃・利尿 |
茯苓 | ブクリョウ | 浮腫・健胃・痰飲・不眠 |
生薬の効能・効果の一覧はこちらの記事から⇩
【生薬一覧】生薬の効能・効果について一覧にしてまとめてみた
もう少し各生薬の薬効を深く見ていきます。
人参
効能・効果
- 代謝改善作用
- 消化吸収亢進作用
- 抗脱水作用
- 精神安定作用
・代謝改善、消化吸収亢進作用:消化吸収を盛んにしてエネルギー産生を増やし、元気にします。
・消化吸収亢進作用:下痢止めとして使用することもあります。
・抗脱水作用:消化吸収を高めるために抗脱水作用があるので、人参が入った漢方薬を使うと夏バテ予防にもなります。
・副作用:消化吸収が亢進するので、副作用として浮腫が出てくることがあります。
甘草
効能・効果
- 代謝改善作用
- 抗炎症作用
- 鎮痙作用
甘草はいろいろな作用がありますが、代謝を改善させる作用が中心です。
・抗炎症作用:甘草の主要成分のグリチルリチンはコルチゾールのように作用するので、抗炎症作用があります。
・鎮痙作用:急迫症状を緩和する鎮痙作用があります。
-
偽アルドステロン症に注意!甘草を含む漢方をまとめてみた
陳皮
効能・効果
- 食欲増進作用
- 精神安定作用
陳皮はミカンの皮です。
食欲増進作用があり、柑橘類には精神安定作用もあります。
大棗
効能・効果
- 健胃作用
- 鎮静作用
大棗は胃粘膜保護作用と鎮静作用があります。
鎮静作用があるので、甘麦大棗湯は赤ちゃんの夜泣きに使われます。
半夏
効能・効果
- 鎮咳去痰作用
- 制吐作用
鎮咳去疲作用と制吐作用があります。
生姜
効能・効果
- 発汗解熱作用
- 制吐作用
- 健胃作用
- 鎮咳作用
・発汗解熱作用:風邪薬として使われます。
・制吐作用:つわりを予防するときに使われます。
・食欲増進作用:夏バテのときに使われます。
蒼朮
効能・効果
- 止痢作用
- 筋肉・関節の歯痛作用
・止痢作用:水代謝を改善する作用から止痢に使われます。
茯苓
効能・効果
- 利尿作用
- 抗めまい作用
- 抗動悸作用
- 鎮静作用
・利尿作用:水代謝を改善することから利尿作用があります。
茯苓は他にも抗めまい、抗動悸、鎮静など、様々な作用があります。
六君子湯の処方構造
六君子湯の構成生薬の構造は以下の通りです。
処方構造
- 消化吸収亢進作用:人参-甘草
- 水代謝改善作用:蒼朮-茯苓
- 胃粘膜保護作用:大棗-生姜
- 蠕動運動改善作用:半夏-陳皮
消化吸収亢進
人参-甘草のペアで消化吸収を亢進させ、患者を元気にさせる狙いがあります。
このペアが六君子湯の主作用です。
人参-甘草のペアは浮腫の副作用があるので注意が必要です。
水代謝改善作用
水代謝を改善する目的で蒼朮-茯苓が含まれています。
胃の機能が低下すると、胃内の水分を十二指腸へ送り出す働きが低下すると言われています。
この病態を改善するために、蒼朮-茯苓が含まれており、人参-甘草の副作用である浮腫も抑えてくれます。
胃粘膜保護作用
胃粘膜を保護するために大棗-生姜が含まれています。
ほとんどの漢方薬にはこのペアが入っています。
蠕動運動改善作用
消化管の蠕動運動を高める目的で半夏-陳皮が含まれています。
人参-甘草、蒼朮-茯苓の4つで四君子湯になります。
四君子湯は消化吸収を高めるだけのものです。
この四君子湯に半夏-陳皮を加え、胃のもたれた感じに対して蠕動運動改善作用をプラスします。
副作用対策
人参-甘草の組み合わせで浮腫や高血圧の副作用が出る恐れがあります。
これらを防ぐために水代謝を改善する蒼朮-茯苓が含まれています。
薬理作用
- グレリン分泌低下改善作用:食欲不振の改善
- 胃排出能促進作用:消化したものを腸に送り出す働き
- 食道クリアランス改善作用:胃酸の停滞を抑える
- 胃貯留能改善作用:食べたものを受け入れる働き
- 胃粘膜防御作用:胃酸から胃の粘膜を守る働き
まとめ
六君子湯について解説しました。
何となく胃関係の漢方だなーという印象があると思いますが、生薬を一つずつ分解してみていくと六君子湯の構造がわかってきますね。
六君子湯のメインは人参-甘草であり、その副作用防止のために蒼朮-茯苓が含まれています。
よくできていると思いませんか?
生薬の組み合わせは星の数ほどあります。
その中から症状にあう組み合わせを研究してきた昔の人たちには頭が上がりませんね。
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以下の記事もご覧ください。
参考文献:
- ツムラ六君子湯添付文書
- 漢方薬処方レクチャー まずはこれだけ20
対象者
- 薬剤師などの医療人
- 登録販売者
- 漢方の知識を深めたい人
- 漢方初心者
代表的な漢方を20種類取り上げ、それぞれ一つずつを解剖して説明しています。
漢方に含まれる生薬を一つずつわかりやすく説明してくれ、生薬の組み合わせによってどのような効果が表れるかを説明してくれます。
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生薬の働きがわかれば、この本に取り上げられている20種類以外の漢方も何故この生薬が含まれていて、どのような効果があるのかがわかるようになってきます。
ココがポイント
- 代表的な漢方の20種類を説明
- 漢方初心者でもわかりやすい解説
- 陰陽などがわからなくても大丈夫
- 各生薬の働き、漢方の構造も詳しく説明