今回は酸化マグネシウムと牛乳の関係についてです。
ミルクアルカリ症候群。
酸化マグネシウムは子供から高齢者まで幅広く使用できる薬です。
便秘薬として使われることが多く、制酸剤として胃の症状に使われることもあります。
よく患者さんから
「酸化マグネシウムと牛乳は何故一緒に飲んではいけないの?」
「たくさんの牛乳って具体的にどれくらい?」
などの質問が来るので、今回は酸化マグネシウムと牛乳の関係について解説していきたいと思います。
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Contents
酸化マグネシウムと牛乳の併用は?
酸化マグネシウムを服用中に牛乳を飲んでも大丈夫ですが、大量に飲むのはダメです。
酸化マグネシウムを服用中に大量の牛乳(カルシウム)を摂取すると、ミルクアルカリ症候群が現れる恐れがあります。
ミルクアルカリ症候群とは、牛乳(カルシウム)の大量摂取と共にアルカリ(酸化マグネシウムや炭酸カルシウムなど)を同時に摂取することが原因で腎臓でのカルシウムの再吸収が増加し、高カルシウム血症が発生した状態のことです。
高カルシウム血症が発症すると悪心・嘔吐、口喝、多尿、意識障害、血圧低下、徐脈、皮膚潮紅、筋力低下、傾眠などの症状が現れることがあります。
大量の牛乳ってどれくらい?
酸化マグネシウムを服用中に牛乳の併用はOKとのことですが、大量に飲むのはダメとのこと。
では、具体的に大量の牛乳とはどれくらいの量なのでしょうか?
一般的には1回に500mL以上、1日に1L以上が大量の目安です。
1回に500mL以上、1日に1L以上の牛乳を飲んでしまうと上記で説明したミルクアルカリ症候群になりやすく、高カルシウム血症の症状が出やすくなってしまいます。
しかし、大量の牛乳を飲んでいなくても高カルシウム血症の症状が出ることがあります。
個々の年齢や性別・腎機能・食事やカルシウム製剤を含めた総合的なカルシウムの摂取量と、患者の状態から高カルシウム血症かどうか判断されるので、大量の牛乳を飲んでいなくても症状が出ることは十分にありえます。
名前が違う酸化マグネシウムはたくさんある
成分が同じ酸化マグネシウムでも、商品名が異なる酸化マグネシウムがたくさん販売されています。
気づかずに重複して飲んでしまうと服用する量が多すぎて思わぬ副作用があらわれる可能性があります。
医療用医薬品の酸化マグネシウムの例
病院でもらう酸化マグネシウム剤の代表的な名前として以下のものがあります。
医療用医薬品の酸化マグネシウム
- 酸化マグネシウム
- マグミット
- 重カマ
この他にも成分が酸化マグネシウムの商品が多数あるので併用に注意しましょう。
名前が違っても成分が同じであれば効き目は一緒です。
重複して飲んでしまうと副作用が出る危険性が高まります。
病院にかかる時、OTC(市販薬)で薬を選ぶときには必ずお薬手帳を持参するようにしましょう。
もっと詳しく
OTCの酸化マグネシウムの例
処方箋で病院から出されることが多いのですが、OTC(市販薬)でも酸化マグネシウムは販売されています。
OTCの酸化マグネシウム
- 酸化マグネシウムE便秘薬
- コーラックMg
- 3Aマグネシア
以上の商品以外にもたくさんのOTCがあります。
病院からもらった酸化マグネシウムではあまり効果が感じられず、OTCで酸化マグネシウムを購入してしまう人もいるので、併用薬がある場合はお薬手帳を必ず薬剤師に見せるようにしましょう。
酸化マグネシウムと併用注意の医薬品
酸化マグネシウムは便秘に対して第一選択薬として使われることが多く、子どもから高齢者まで安全に使うことができるとされています。
さらに、上記で示した通りOTC(市販薬)としても販売されており、世間一般的には「安全な薬」と認識されています。
酸化マグネシウムには絶対に使ってはいけない、併用してはいけないという「禁忌」の項目がありません。
これらのことが安心・安全な薬という認識を加速させているのだと思います。
しかし、添付文書をよく見てみると「併用注意」の欄にたくさんの薬が挙げられています。
「併用注意」は禁忌とは違い、絶対に飲んではいけないということではないのですが、薬の効果を増加・減少させたり、思わぬ副作用が出ることがあります。
このことを知らずに酸化マグネシウムを安全・安心だと言えるのでしょうか?
以下に酸化マグネシウムと併用注意の医薬品をまとめてみました。
併用注意一覧
併用注意 (併用に注意すること)
本剤は吸着作用、制酸作用等を有しているので、他の薬剤の吸収・排泄に影響を与えることがある。
番号 | 分類 | 成分名 | 商品名 |
① | テトラサイクリン系抗生物質 | テトラサイクリン | アクロマイシンVカプセルなど |
ミノサイクリン | ミノマイシン錠など | ||
ニューキノロン系抗菌剤 | シプロフロキサシン | シプロキサン錠など | |
トスフロキサシン | オゼックス錠など | ||
ビスホスホン酸塩系骨代謝改善剤 | エチドロン酸二ナトリウム | ダイドロネル錠など | |
リセドロン酸ナトリウム | アクトネル錠、ベネット錠など | ||
② | セフジニル | セフゾンカプセルなど | |
セフポドキシム プロキセチル | バナン錠など | ||
ミコフェノール酸 モフェチル | セルセプトカプセルなど | ||
デラビルジン | 販売中止 | ||
ザルシタビン | 販売中止 | ||
ペニシラミン | メタルカプターゼカプセルなど | ||
③ | アジスロマイシン | ジスロマック錠など | |
セレコキシブ | セレコックス錠など | ||
ロスバスタチン | クレストール錠など | ||
ラベプラゾール | パリエット錠など | ||
ガバペンチン | ガバペン錠、レグナイト錠など | ||
④ | ジギタリス製剤 | ジゴキシン | ジゴシン錠、ラニラピッド錠など |
ジギトキシン | 販売中止 | ||
鉄剤 | フェロミアなど | ||
フェキソフェナジン | アレグラなど | ||
⑤ | ポリカルボフィルカルシウム | コロネル錠、ポリフル錠など | |
⑥ | 高カリウム血症改善イオン交換樹脂製剤 | ポリスチレンスルホン酸カルシウム | アーガメイトゼリーなど |
ポリスチレンスルホン酸ナトリウム | ケイキサレート散など | ||
⑦ | 活性型ビタミンD3製剤 | アルファカルシドール | アルファロールカプセル、 ワンアルファ錠など |
カルシトリオール | フルスタン錠、 ロカルトロールカプセルなど | ||
⑧ | 大量の牛乳 | ||
カルシウム製剤 | アスパラ-CAなど | ||
⑨ | ミソプロストール | サイトテック錠など |
*表が切れてたら横にスクロールしてください。
臨床症状・措置方法と機序・危険因子
併用してしまった時の「臨床症状・措置方法」と「機序・危険因子」を以下に記載します。
上記の表の番号と連動しています。
番号:①
臨床症状・措置方法:これらの薬剤の吸収が低下し、効果が減弱するおそれがあるので、同時に服用させないなど注意すること。
機序・危険因子:マグネシウムと難溶性のキレートを形成し、薬剤の吸収が阻害される。
番号:②
臨床症状・措置方法:これらの薬剤の吸収が低下し、効果が減弱するおそれがあるので、同時に服用させないなど注意すること。
機序・危険因子 機序不明
番号:③
臨床症状・措置方法:これらの薬剤の血中濃度が低下するおそれがある。
機序・危険因子 機序不明
番号:④
臨床症状・措置方法:これらの薬剤の吸収・排泄に影響を与えることがあるので、服用間隔をあけるなど注意すること。
機序・危険因子:マグネシウムの吸着作用または消化管内・体液のpH上昇によると考えられる。
番号:⑤
臨床症状・措置方法:ポリカルボフィルカルシウムの作用が減弱するおそれがある。
機序・危険因子:ポリカルボフィルカルシウムは酸性条件下でカルシウムが脱離して薬効を発揮するが、本剤の胃内pH上昇作用によりカルシウムの脱離が抑制される。
番号:⑥
臨床症状・措置方法:これらの薬剤の効果が減弱するおそれがある。また、併用によりアルカローシスがあらわれたとの報告がある。
機序・危険因子:マグネシウムがこれらの薬剤の陽イオンと交換するためと考えられる。
番号:⑦
臨床症状・措置方法:高マグネシウム血症を起こすおそれがある。
機序・危険因子:マグネシウムの消化管吸収及び腎尿細管からの再吸収が促進するためと考えられる。
番号:⑧
臨床症状・措置方法:milk-alkali syndrome(高カルシウム血症、高窒素血症、アルカローシス等)があらわれるおそれがあるので、観察を十分に行い、このような症状が現れた場合には投与を中止すること。
機序:代謝性アルカローシスが持続することにより、尿細管でのカルシウム再吸収が増大する。
危険因子:高カルシウム血症、代謝性アルカローシス、腎機能障害のある患者。
番号:⑨
臨床症状・措置方法:下痢が発現しやすくなる。
機序・危険因子:ミソプロストールは小腸の蠕動運動を亢進させ、小腸からの水・Naの吸収を阻害し、下痢を生じさせる。本剤には緩下作用があるので、両者の併用で下痢が発現しやすくなる。
まとめ
ココがポイント
- 酸化マグネシウムを服用中に牛乳を飲んでもOK
- 牛乳の量は1回500mL、1日に1L以下
- 大量の牛乳(カルシウム)を摂取すると、ミルクアルカリ症候群が現れる恐れがある
- 酸化マグネシウムの商品は多数あるので併用に注意
- 酸化マグネシウムと「併用禁忌」の薬は無いが、「併用注意」の薬はたくさんある
以上のことを注意しましょう。
基本的には酸化マグネシウムを服用中に牛乳を飲むのは控えた方がいいと思います。
上記でも述べたように、大量ではなくても個人の体調や腎機能によって副作用が出やすい人もいます。
少しだから大丈夫という自己判断は非常に危険です。
また、酸化マグネシウムは一般的に使われている薬との併用注意が多いことがおわかりいただけたでしょうか?
コレステロールの薬であるクレストールやアレルギーの薬であるアレグラなどはかなり頻繁に処方されています。
その他にも抗生剤や胃薬など、聞いたことがある薬がたくさんあると思います。
聞いたことがある薬がたくさんあるということはそれだけ患者さん・お客さんが飲んでいる確率が高いということです。
禁忌がないからと言って安全・安心なわけではありません。
お薬手帳などから併用薬をしっかりと確認し、本当に安全・安心に飲めるように指導・サポートしていきたいですね。
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