今回は調剤・ドラッグストアの期限チェックについてです。
期限チェック。
商品には使用期限や賞味・消費期限があります。
当然、期限が切れたものを患者さん・お客さんに販売することはできません。
期限の確認は基本的には目視で確認するしかありません。
今回は調剤とドラッグストアの期限チェックについて説明します。
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Contents
調剤・薬の期限チェック
調剤の期限チェックは月に一度、期限切れの医薬品のデータをパソコンから抽出し、期限が切れそうなものを廃棄していきます。
医薬品の情報はすべてパソコンで管理されています。
この医薬品がいつ入荷され、誰にお渡ししたか、使用期限や製造番号まで詳細に記録されているのです。
医薬品の発注もパソコンで行うので、卸とも連動しています。
医薬品に関しては自主回収といい、何か医薬品に問題があったときに卸が対象医薬品をすべて回収するというシステムがあります。
自主回収する際に製造番号が必要不可欠なため、パソコンですべて製造番号などを管理し、卸とも連携しています。
医薬品の自主回収と対応方法について徹底解説【クラス・患者対応】
使用期限が近い医薬品の処理
期限が近い医薬品をそのままにしておくと確実に廃棄になります。
ドラッグストアの商品と違い、医療用医薬品は半額などにすることができず、該当する医薬品が処方されなければ調剤できないのでこちらから積極的に対策するということが難しいのです。
しかし、何か対策をしないと廃棄する医薬品は増えてしまいます。
このような使用期限が近い医薬品の処理はどうすればいいのでしょうか?
多店舗に引き取ってもらう
一番はこの方法です。
系列が同じ店舗やチェーン店などでは比較的簡単です。
こちらから問い合わせて引き取ってもらえればこちらの廃棄は減りますし、会社・薬局としての損失も減るのでいいこと尽くしです。
しかし、相手側がもらってくれるという条件があります。
Mr.Tが働いている薬局のシステムでは、全店舗の在庫状況をみることができます。
例えばボナロン経口ゼリーの期限が近づいてきて、デッドストック(不動在庫:ある一定の期間、処方が無い在庫のこと)になってしまった場合には全国のボナロン経口ゼリーの使用状況を確認します。
調剤頻度が高い店舗に連絡を取り、引き取ってもらうようにお願いします。
あちら側がOKしてくれれば薬を郵送して終了です。
また、同じ会社・薬局でなくても他の薬局に引き取ってもらうという手もあります。
薬剤師会などに入会していれば近隣店舗とのつながりがある薬局は多いでしょう。
小分け依頼などで頻繁に助け合いしている薬局もあると思います。(中には一方的な小分け依頼もありますが…)
Mr.Tが入会している薬剤師会では各薬局の在庫状況が分かる帳簿を作成しているので、デッドストックの医薬品を確認することができます。
しかし、大抵は同じ会社内で済ませますが。
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卸に返品する
未開封の状態であれば卸に返品できる可能性があります。
しかし、未開封でも期限が何カ月以内とか、冷所品は不可など様々な条件があるので卸に確認しましょう。
卸ごとに違いますし、医薬品ごとにも条件が違います。
卸と仲良くなると、仮に医薬品の期限が近くて条件を満たさなくても担当者が頑張って他の薬局にお願いしてくれることもあります。
無理を言って何とかしてくれることもあるのです。
卸側からも薬局に対してお願いすることが多いので、そこはお互い助け合い、win-winの関係を保っていけるようにしましょう。
ネットを利用する
デッドストックを買い取ってくれるサービスが増えています。
ネットで検索するとたくさん出てきます。
ネットで登録し、買い取ってもらうシステムですね。
しかし、その会社によりますが様々な条件があるため、利用するのは難しいと思います。
未開封であるとか、添付文書付きとか…
また、多少なりとも手数料などが発生する可能性があるため、1万円の薬が1万円で売れるとは限りません。
多少なりともロスは出ます。
しかし、仮に1万円の薬が5000円で売れたら5000円の損失で済むのでダメージは少なくて済みます。
個人経営の薬局や、周りに頼る薬局が無い場合は使ってみるのも一つの手でしょう。
どの方法を使うにしても、早めに動くことが重要です。
期限が残り1カ月しかない医薬品を引き取ってくれる薬局はほとんどありません。
期限が切れた医薬品を患者さんに出すわけにはいかないですよね。
期限が近づく前にデッドストックになりそうな医薬品をピックアップし、早めに多店舗に相談すると引き取ってくれる可能性が高くなります。
その為にも在庫管理をしっかりとし、廃棄薬を出さないための工夫をしましょう。
また、医薬品に関してはパソコンが期限をチェックしてくれますが、あくまでも期限が近い医薬品から優先的に使った場合のみです。
使用期限が長いものから使ってしまうとデータが狂ってしまいます。
頻繁に調剤する医薬品は回転が速いのでそこまで使用期限のことを考えなくてもいいですが、調剤する頻度が少ない医薬品に関しては使用期限を気にしながら調剤するべきでしょう。
特に高額医薬品が要注意です。
面で行っていると、患者さんが1回来て終了→デッドストックとなるパターンが非常に多いです。
高額医薬品は特に気にしておくべきです。
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ドラッグストアの期限チェック
ドラッグストアでは商品の数が多く、すべての商品をデータ化して管理するのは不可能です。
また、お客さんが手に触れる機会が多く、期限が近い商品から店頭から無くなっていくとは限りません。
だからこそ、ドラッグストアの商品は人力ですべて目視で行います。
期限チェックの作業自体は簡単なので誰でもできます。
商品を見て、期限が近いものは棚から排除します。
期限がまだあるものは、期限が近い商品を手前にして並び替えます。
OTC(市販薬)では3~6ヶ月、食品はその日などカテゴリーごとに排除する期間が違うので、その店舗の責任者にきちんと確認してから作業に入るようにしましょう。
使用期限が近い商品の処理
期限が近い商品をそのままにしておくと確実に廃棄になります。
商品にもよりますが、ドラッグストアの商品では様々な対策ができます。
このような使用期限が近い商品の処理方法を説明します。
値下げする
商品によって可能、不可能がありますが、半額などの値下げをして販売する方法があります。
期限が近いという「訳アリ商品」ですね。
店舗の責任者の方針によって違ってくるのですが、期限が近いから早く売ってしまいたいという人は半額にするなどドカンと値段を落として販売します。
少しでも利益を出したいという人は粗利などを計算し、10%引き、20%引きなどにして販売します。
どちらの方法が優れているかはわかりません。
少しでももうけを出したいという理由はわかりますが、少しの値引きだと売れない可能性が高く、そのまま廃棄になってしまうというリスクもあります。
また、その値段を計算するための時間が非常にもったいないです。
費用対効果が良ければ計算して販売してもいいですが、正直何も考えずに半額にしてしまい、その他の商品の販売に力を入れた方が効率的だと思います。
人気が無いからこそ期限切れになる可能性が高いので、多少値引きしたところで売れるとは限りません。
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バラして売る
「1箱に10個入り」などという商品がたくさんあります。
1箱の量が多すぎるから売れないということも考えられます。
なので、1箱をバラして1個ずつ販売するという手法も取ることができます。
「1箱買ってもし合わなかったら嫌だな…」
というお客さんでも、1個の販売であれば合わなくてもお試しで買ってみようという意識が働きます。
サンプルにしてしまう
思い切って廃棄にし、サンプルにして配るという方法です。
いい商品でもお客さんに伝わらなければ売れることはありません。
特に化粧品などは実際に使ってみなければわからないので、サンプルをお客さんにあげて実際に使用感を試してみてもらうという手を使うことが多いです。
タダなのでお客さんは嫌な気はしません。
サンプルを使ってよかったとなると、次回以降の購入にもつながります。
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多店舗に引き取ってもらう
よく売れている店舗に引き取ってもらうのも一つの手です。
店舗によって客層が違うので、売れる商品に偏りが出ます。
この店舗ではさっぱり売れないのに、よその店舗では爆発的に売れているということは普通です。
多店舗の販売状況を見て、引き取ってもらえるかをお願いしてみましょう。
返品する
返品できるものは返品しましょう。
中には返品できるものとできないものがあり、試してみないとわかりません。
返品されたものがその後どうなるかは詳しくはわかりませんが、そのままメーカーに戻る、処分されるという処理方法を聞いたことがあります。
なので、期限が切れた商品を返品できる可能性があり、Mr.Tも取り敢えずは期限が切れた商品も返品してみます。
ダメなら廃棄になるだけですし、返品して廃棄になるのであれば結局は同じことです。
しかし、店舗としての廃棄率に影響があるので、返品を試してみるのがベストでしょう。
返品しすぎると逆に返品率があがるため、返品できるからと言って大量に仕入れるのは控えましょう。
期限チェックをしっかり行っているハズなのに…
調剤の医薬品もドラッグストアの商品も人の目が通っています。
期限チェックをきちんとしているのにもかかわらず、期限切れの医薬品を調剤してしまったとか、賞味期限切れの商品を販売してしまったという事例が後を絶ちません。
中には
「いつの商品だよコレ…」
という、化石化されたような商品が棚の奥から出てくることもあります。
人が行うという点、誰でもできるという点がこのような事態を引き起こします。
だからと言って、すべてAIに任せるとか、責任者がすべて行うということは不可能です。
いくら仕事をしっかりと教えても期限チェックを行う人にやる気が無ければこのような事態はいくらでも起こりえます。
期限チェックは比較的簡単な仕事であるため、バイトやパート、新人に任せられることが多いです。
責任感が違いますので、やはり責任者が行うのと比較するとミスが多く、適当にやってしまうことが多いです。
その点も含めて責任者がうまく運営していくスキルも必要になってきます。
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【薬局・AI化】薬剤師の仕事はなくなる? 薬局のAI化について考えてみた
Mr.Tの失敗談
調剤を行ったうえで、Mr.Tも期限切れの医薬品を患者さんにお渡ししてしまったことがあります。
まだ管理薬剤師になる前で、応援薬剤師として勤務していたときのことです。
そこは事務無し一人薬剤師なので、すべて一人で行わなければなりません。
点鼻薬を調剤棚のケースから2本取り出し、もう1本を調剤棚の上にストックしてある箱を開封して調剤しました。
問題が発覚したのは業務の終わりに棚卸をしているときでした。
ストックとして調剤棚の上に箱で置いてある点鼻薬の期限が切れていることに気づきました。
データ上では期限切れの医薬品は存在しないことになっているのにも関わらず、目の前には期限が切れている点鼻薬が存在するのです。
すぐさま患者さんに電話してお渡しした点鼻薬を確認してもらったところ、ストックで置いてあった点鼻薬の期限が切れていることが発覚しました。
そこから取ったので当然と言えば当然。
すぐに謝罪して新しいものと交換させてくださいと言いましたが、患者さんは
「1ヶ月ぐらい期限が切れていても大丈夫。問題ない。取り換えるのが面倒だからいいよ。」
と言ってくれ、特に怒っている様子もなくそのままのお渡しの形になりました。
この患者さんは昔、卸関係に勤めていたことがあり、少しぐらい期限が切れても体には問題ないという考えでした。
確かに少しぐらい期限が切れていても人体に影響はそこまでありませんが、他の患者さんには通用しません。
何事もなく終わりましたが、ミスはミスです。
患者さんの配慮に感謝しかありません。
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何が問題だった?
このケースでは何が問題だったのでしょう?
注意ポイント
- Mr.Tが調剤する時に期限をしっかりと確認しなかった
- 期限の遠いものが調剤棚の上にストックされていると思い込んでいた
- 管理薬剤師の在庫管理の怠慢
以上の問題点が考えられます。
一番は調剤時に期限の確認をしっかりとしなかったMr.Tの責任です。
また、思い込みの要素もあります。
普通の薬剤師であれば期限が近いものは手前、遠いものは奥や遠くにあると思います。
最後に、管理薬剤師の管理ミスも挙げられます。
これらの要因が重なり、最終的に調剤ミスに繋がってしまったのです。
このミスから点鼻薬や貼り薬、塗り薬などの期限がパッケージに書かれてある医薬品は必ず監査時に使用期限を見るようにしています。
まとめ
調剤・ドラッグストアの期限チェックについて説明してきました。
チェック方法とその対処法についても説明しましたが、いくらか参考になった部分はあるでしょうか?
店舗としてはいかに廃棄を出さないかが重要になってきます。
廃棄にしないために様々な方法があり、やるかやらないかで廃棄率が全然違ってきます。
待っていても商品が売れることはありません。
自分から動くことが重要です。
最後にMr.Tの調剤ミスの事例も上げました。
経験不足、思い込みからくるミスもあります。
データで管理しているからこそ信じ切ってしまって犯したミスでもあります。
最後に信じられるのは自分の目なので必ず確認してから調剤、販売するようにしましょう。
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