こんにちは。Mr.Tです。
今回は『消毒用エタノール』と『消毒用エタノールIP「ケンエー」』の違いについてです。
消毒用エタノールと消毒用エタノールIP「ケンエー」の違い。
健栄製薬さんから販売されている消毒液の商品で、消毒用エタノールと消毒用エタノールIP「ケンエー」があります。
薬局やドラッグストアなどでも簡単に手に入る商品です。
Mr.Tの薬局でも消毒用エタノールIP「ケンエー」を使わせていただいています。
見た目と名前が似ていて、お客さんからは何が違うのかよく質問されることがあります。
これら2つの商品の効果はほとんど差がありませんが、値段が違います。
なぜ効果がほとんど同じなのに値段が違うのでしょうか?
今回は消毒用エタノールと消毒用エタノールIP「ケンエー」の違いついて解説していきます。
なお、これからは以下の表記で解説します。
- 消毒用エタノール:消毒用エタノール
- 消毒用エタノールIP「ケンエー」:IP
IPは酒税がかからないので安い
酒税の有無で値段が変わってきます。
IPには酒税がかからないので、消毒用エタノールより値段が安くなっています。
IPには添加物としてイソプロパノールが含まれているため、消毒用エタノールと効果効能がほとんど一緒であるにも関わらず酒税がかかりません。
そのため、多くの場合消毒用エタノールよりもIPの方が値段が安いのです。
成分の違い
消毒用エタノール
エタノール(C2H6O)76.9~81.4vol%
IP
エタノール(C2H6O)76.9~81.4vol%+イソプロパノール
消毒効果の違い
IPは消毒用エタノールとほぼ同等の消毒効果を示しますが、エンベロープをもたない親水性ウイルス(ノロウイルス、ロタウイルス、アデノウイルスなど)に対する効果は消毒用エタノールに比べて劣っています。
したがって、ノロウイルス、ロタウイルス、アデノウイルスなどの消毒では、消毒用エタノールのほうを選択したほうがよいです。
また、IPの毒性は消毒用エタノールより2倍程度高く、強い脱脂作用があるので、手指の消毒にIPを用いると手荒れが生じやすくなります。
さらに、IPには刺激作用があるので傷口や粘膜には使用できません。
以上より、IPのほうが値段は安いですが、安全性を考慮すると消毒用エタノールの方が安全です。
作用機序の違い
ココがポイント
- 消毒用エタノール:組織の水分を奪って蛋白凝固をして殺菌作用を起こす
- IP:蛋白を変性凝固させて殺菌作用を起こす
イソプロパノールが含まれることによって作用機序が少し異なります。
比較一覧
消毒用エタノール | IP | |
成分 | エタノールのみ | エタノール イソプロパノール |
値段 | 高い | 安い |
消毒効果 | ほぼ同じ | ほぼ同じ |
適応の広さ | 広い | 狭い |
皮膚への刺激 | 弱い | 強い |
安全性 | 〇 | × |
単純に2つを比較するとこのような表になります。
日常の消毒に使うのであればIPで問題ないのですが、皮膚への刺激であったり、適応するウイルスによっては使い分ける必要があります。
まとめ
ココがポイント
- 酒税がかからないのでIPの方が安い
- 効果はほとんど変わらない
- ノロウイルス、ロタウイルス、アデノウイルスなどには消毒用エタノールのほうがよい
- IPの方が刺激が強く、傷口や粘膜には使用できない
- IPの方が手・指などが荒れやすい
- 安全性を考慮するのであれば消毒用エタノールのほうがよい
文章でまとめると以上のようになります。
普段の消毒で使うのであればIPで十分でしょう。
しかし、適応や刺激性、安全性を考慮するのであれば消毒用エタノールの方が優れています。
Mr.Tの薬局では普段の消毒はIPを使っていますが、繰り返し使っているとやはり手が荒れます。
今回説明したことを理解し、用途に合わせた柔軟な接客をできるようになりましょう。
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参考文献:
対象者
- 薬剤師
- 登録販売者などのOTC業務に携わる人
- ドラッグストアで働く人
- ドラッグストアでどんな質問が多いか知りたい人
ドラッグストアでよく質問される事項をQ&A方式でわかりやすく説明されています。
薬だけでなく、化粧品や雑貨なども取り扱っており、ドラッグストアに勤務している人にはぜひ読んでもらいたい一冊です。
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発行日が古いですが、今でも役に立つ情報が満載です。
ココがポイント
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