どこの薬学部に行くか迷ってるの。
国家試験の合格率が高い大学を選んだ方が安心だよね。
国家試験の合格率を基に判断するのも一つの手だけど、数字をそのまま信じるのは危険だよ。
公表されている合格率にはからくりがあるから注意が必要なんだ。
こんな方におすすめ
- 薬学部に入りたい人
- 薬剤師国家試験の合格率について詳しく知りたい人
- 薬剤師国家試験の合格率を判断材料に大学を決めたい人
どこの大学の薬学部に入ろうかどうか迷っているときに、国家試験の合格率は判断材料の一つです。
高ければ高いほど薬剤師になりやすい、教育がしっかりしていると思うのは当然のことでしょう。
Mr.Tも国家試験の合格率を判断材料の一つにしたよ。
その時はまだ合格率のからくりについて知らなかったんだ。
国家試験の合格率で、公表された数字をそのまま鵜呑みにするのは非常に危険です。
合格率の裏側にはからくりがあり、そのからくりをしっかりと理解しておかないと入学してから痛い目にあいます。
今回は薬剤師国家試験の合格率のからくりについて説明していきます。
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Contents
薬剤師国家試験合格率のからくり
この章では薬剤師国家試験の合格率のからくりについて説明していきます。
第108回の合格率
第108回の合格率と、国公立・私立の上位3大学の数値を見てみましょう。
開催年 | 試験回数 | 合格率 (全体) | 合格率 (6年制新卒) | 合格率 (6年制既卒) |
2023年(R5) | 第108回 | 69.00% | 84.86% | 44.05% |
国公立 | ||||
千葉大学 | 91.30% | 94.87% | 80.00% | |
東北大学 | 89.66% | 100.00% | 50.00% | |
静岡県立大学 | 89.11% | 95.12% | 55.56% | |
私立 | ||||
名城大学 | 93.84% | 96.84% | 80.56% | |
昭和大学 | 91.15% | 95.18% | 68.00% | |
医療創生大学 | 88.52% | 91.23% | 50.00% |
国公立・私立共に、上位3校は高い合格率を誇っていることがわかります。
しかし、日本で一番の大学である「東京大学」がランクインしていなかったり、国公立と私立の合格率が同程度なことなど、疑問に思うことも多いでしょう。
以下で合格率のからくりを説明していきます。
合格率だけでみると薬剤師の国家試験は簡単そうに見えるよね。
でも実際には問題の難易度はすごく高いんだ。
合格率の算出方法
合格率の算出方法は以下の式です。
ココがポイント
- 「合格者数 ÷ 受験者数」
当たり前だと思う人が多いですが、この式に重要な意味が隠されています。
国家試験の合格率はこの「合格者数 ÷ 受験者数」だけに注目が行きがちですが、「出願者数」にも目を向けなければいけません。
出願した人が全員受験できるとは限らず、出願者数と受験者数が大きく異なる大学も多いのです。
当日体調不良とかで残念ながら受けられなかった人もいるんだけど、それ以上にもっと重要な事実が隠されているんだよ。
出願者数と受験者数の違い
出願者数と受験者数が違う理由は体調不良など様々ありますが、一番の原因は国家試験を受験する資格が与えられなかったということです。
卒業試験に合格できずに留年してしまい、国家試験を受けられなかった人も多いので、出願者数と受験者数に大きな相違が出てしまいます。
この傾向は私立で顕著なので、私立の出願者数と受験者数を見てみましょう。
大学名 | 出願者数 | 受験者数 | 合格者数 |
名城大学 | 308 | 292 | 274 |
昭和大学 | 199 | 192 | 175 |
医療創生大学 | 75 | 61 | 54 |
第108回の国家試験で私立大学トップの合格率を誇る名城大学は、16人もの人が国家試験を受けていないことがわかります。
仮に出願した人が国家試験を受験した場合の合格率は以下のようになります。
大学名 | 合格率 (合格者数 ÷ 出願者数) | 合格率 (合格者数 ÷ 受験者数) | 出願者数 - 受験者数 |
名城大学 | 88.96% | 93.84% | 16 |
昭和大学 | 87.94% | 91.15% | 7 |
医療創生大学 | 72.00% | 88.52% | 14 |
「合格者数 ÷ 出願者数」で計算すると、合格率は下がりますがここでも名城大学が一番が高い計算になります。
しかし、2位の昭和大学との差は縮まっていることがわかりますね。
医療創生大学に至っては、72%まで合格率が落ちてしまいます。
出願者数と受験者数に大きな開きがある場合は卒業試験が難しく、留年してしまう人が多い可能性があるので注意しましょう。
後で詳しく説明するけど、国家試験に受かりそうにない人を受けさせてしまうと合格率が下がってしまうから、大学側としてはあまり受けさせたくないんだ。
留年・退学は考慮されていない
薬学部は留年や退学が多い学部です。
ストレートに国家試験までたどり着くためには一生懸命勉強しなければなりません。
上記で紹介した出願者数が全員ストレートで進級してきた人とは限らず、留年した人も含まれているので注意が必要です。
残念ながら途中でリタイアしてしまう人もいますが、カウントされません。
進級率が低い大学ほどテストが難しいなどということもあるので、数字だけに惑わされないようにしましょう。
新卒の数がすべてストレートで進級してきた人の数ではないってことだよ。
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薬剤師国家試験の合格率は大学のアピールポイント
この章では薬剤師国家試験でからくりが生じる理由を説明していきます。
私立は合格率が最大のアピールポイント
近年、私立の薬学部が乱立され、薬学部に入学するのは以前に比べて難しくなくなりました。
私立大学は自分の大学に生徒を集める必要があるためにあらゆるアピールをしますが、一番わかりやすいアピールが国家試験の合格率なのです。
国家試験の合格率が高いというだけでインパクトが違います。
いくら環境がいい、教授が優秀などと謳っても合格率が低ければ行きたいとは思いませんよね。
上記で説明した通り、留年者や退学者、出願数と受験者数などのからくりを受験生は知らないため、見た目だけの合格率に騙されてしまう人が多いのです。
騙すという言い方はちょっと言い過ぎかもしれないけど、中身をきちんと知らないと結局は自分が痛い目を見ることになるんだよ。
国公立は研究志望が多い
国公立大学の方が私立大学より入るのが難しいのは受験生の間では常識だと思います。
勉強する科目数が多く定員も少ないため、国公立の薬学部に入れる人はとても優秀な人たちです。
また、学費も私立に比べて安いので、国公立は学生にアピールする必要がなく、自然と優秀な生徒が集まってきます。
国公立に入れる人ほど優秀な人たちは薬剤師になるより研究職に就く人が多いです。
国家試験に合格しないと薬剤師にはなれませんが、研究職に就くのであれば薬剤師免許は必要ありません。
以上の理由より、国公立は私立大学に比べて国家試験対策に力を入れていないため、学生の質と合格率が比例しない傾向があるのです。
国公立の方が人数も少ないし、国家資格を取らなくても大丈夫だと思う人もいるから、合格率で判断するなら私立を見た方がいいよ。
国家試験の合格率が高すぎて問題になった大学もある
国家試験の合格率が高すぎて問題になった大学もあります。
その大学は全大学の中で合格率トップの成績をたたき出したのですが、卒業試験でたくさんの人を留年させ、合格する見込みがある人だけを国家試験に受けさせるという行為を行ったのです。
卒業試験に受からなかった人が多かったため、周りから問題視されてしまったのですね。
この問題以降はあまり卒業試験で留年者を出すことはしなくなったようですが、合格率はやはり下がってしまったみたいです。
以前にこのような問題が発生してしまったため、現在ではあからさまに卒業試験でたくさんの人を落とすことはしないでしょう。
卒業試験の方が国家試験より難しい大学もあるからね。
合格率を意識するのであれば確実に受かる人を受けさせたいのはわかるけどやり方がちょっとね…
薬剤師国家試験の合格率は新卒の合格率を見ることが多い
この章では薬剤師国家試験の合格率は新卒の合格率を見ることが多い理由を説明します。
新卒の合格率が一番高い
薬剤師国家試験の合格率は、主に以下の4通りで公表されます。
ココがポイント
- 総数
- 新卒(6年制卒業者)
- 既卒(6年制卒業者)
- その他(旧4年制卒業者・受験資格認定者)
この中で一番注目されるのは新卒(6年制卒業者)です。
上記で説明した通り、私立大学は合格率でアピールをしています。
総数が一番重要に思えますが、総数には国家試験で浪人した人の数まで含まれてしまい、全体的に合格率が下がるのであまり重要視しません。
どこの大学も数値が高い合格率でアピールしたいため、新卒(6年制卒業者)の合格率を大々的にアピールしてきます。
既卒の合格率はどうしても低くなるから、新卒の受験生や高校生は新卒の合格率だけ見ておけばいいよ。
新卒の第108回の合格率
上記では総数の合格率を見てみましたが、この章では新卒の合格率で国公立・私立の上位3大学の数値を見てみましょう。
国公立 | |
東北大学 | 100.00% |
徳島大学 | 97.44% |
長崎大学 | 97.14% |
私立 | |
立命館大学 | 98.98% |
名城大学 | 96.84% |
昭和大学 | 95.18% |
第108回では国公立では東北大学が100%、私立大学では立命館大学が98.98%でトップに立っています。
これらの数値が大々的にアピールポイントになるので、特に私立ではこれらの数値をよく見ることになります。
私立で98.98%ってかなりすごいと思うよね。
でもこれにも少しからくりがあるから次の項目で説明していくよ。
真の合格率?
上記で新卒の第108回の合格率をまとめました。
しかし「出願者数と受験者数の違い」でも説明した通り、上記の合格率は出願者数が考慮に入れられていません。
出願者数を考慮した合格率を巷では真の合格率と呼ばれることがあります。
新卒の第108回合格率の私立トップ3を、出願者数を考慮してまとめてみましょう。
大学名 | 真の合格率 (合格者数 ÷ 出願者数) | 合格率 (合格者数 ÷ 受験者数) | 出願者数 - 受験者数 |
立命館大学 | 82.91% | 98.98% | 19 |
名城大学 | 92.11% | 96.84% | 13 |
昭和大学 | 91.86% | 95.18% | 6 |
トップの立命館大学が一気に82.91%まで落ちてしまいました。
19人もの受験生が出願したのにもかかわらず、受験できなかったということになります。
単純に大学の合格率を上げるのは簡単で、国家試験に合格できそうにない学生を卒業試験で大量に落としてしまえば自然と合格率は上がります。
上記の3大学はそこまで人数が多くありませんが、全国の大学を見てみると出願したのに受験できない人が多い大学が数多くあります。
この場合、合格率が高くても真の合格率が低い傾向があるので、やはり参考にするのであれば真の合格率を見ておくべきでしょう。
受かりそうにない人を受けさせたくない気持ちはよくわかるけどね…
あまりにも多いと大学の質が疑われると思うんだけど。
私立の真の合格率トップ・ワースト3
大学名 | 真の合格率 | 合格率 | 出願者数 | 受験者数 | 合格者数 | 出願者数 - 受験者数 |
トップ3 | ||||||
国際医療福祉大学 | 92.79% | 92.79% | 111 | 111 | 103 | 0 |
名城大学 | 92.11% | 96.84% | 266 | 253 | 245 | 13 |
昭和大学 | 91.86% | 95.18% | 172 | 166 | 158 | 6 |
ワースト3 | ||||||
姫路獨協大学 | 33.33% | 52.94% | 54 | 34 | 18 | 20 |
城西国際大学 | 42.17% | 49.30% | 83 | 71 | 35 | 12 |
第一薬科大学 | 46.53% | 94.00% | 101 | 50 | 47 | 51 |
*表が切れてたら横にスクロールしてください。
国際医療福祉大学は出願者全員が受験でき、かつ真の合格率も高いことがわかります。
また、第一薬科大学は受験できなかった人が51人と多く、新卒の合格率と真の合格率の間にかなりの差があることがわかります。
なので、新卒の合格率だけを見て判断するのが危険で、真の合格率を知っておくべきなのです。
合格率で大学を選ぶのであれば、絶対に真の合格率を参考にすべきだよ。
単純に大学で公表されている合格率を参考にしただけだと、留年してしまう確率も高くなってしまうからね。
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薬剤師国家試験「真の合格率」ランキング【第108回最新版】
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まとめ:国家試験の合格率だけで判断してはいけない
今回は薬剤師国家試験の合格率のからくりについて説明してきました。
国家試験の合格率は一つの判断材料ですが、見た目の数字だけを信じすぎないようにしましょう。
合格率が高くても、自分が留年してしまっては元も子もありません。
できるだけ高校時代に一生懸命勉強し、偏差値が高い大学や名の知れている大学に行くことが賢明でしょう。
新設大学が悪いわけではないですが、定員割れを起こしたり、留年率が高かったりということが多いです。
最後はどれだけ自分が頑張れるかが重要ですが、周りの環境も大きく影響してきます。
なるべくレベルの高い人たちと切磋琢磨したほうが合格に限りなく近づきますよ。
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参考:厚生労働省 公式ページ